東京高等裁判所 平成4年(ネ)294号 判決 1993年1月25日
控訴人(被告)
クローバ運輸株式会社
ほか一名
被控訴人(原告)
八嶋亮太
主文
原判決中控訴人らに関する部分を左のとおり変更する。
控訴人らは、被控訴人に対し、連帯して金二五八八万三〇四六円及びこれに対する昭和六一年五月二二日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
被控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は第一、二審を通じてこれを二分し、その一を控訴人らの、その余を被控訴人の負担とする。
事実
一 控訴代理人は、「原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。被控訴人の控訴人らに対する請求をいずれも棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。
二 当事者双方の主張は、次のとおり付加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。
1 原判決六枚目裏八行目「知らない。」を「争う。被控訴人は事故後事故前を上廻る収入を得ている。また、被控訴人は終身雇傭でない外資系の会社に勤務しており、六七歳まで事故前の収入を得ることはできない。」に改める。
2 原判決七枚目表三行目の「また」の次に「、本件事故当時、被控訴人の運転していた被害車両は、渋滞のためほとんど停止状態の車両間を走行していたのであるから、このような状況下、被控訴人にも前方を注意して運転すべき注意義務があつたにもかかわらず、被控訴人は右」を加える。
三 証拠関係は、本件記録中の原審の書証目録、証人等目録の記載と同一であるから、ここにこれを引用する。
理由
一 被控訴人の請求原因及び控訴人らの抗弁に対する当裁判所の認定判断は、次のとおり付加するほか、原判決の理由説示のとおりであるから、ここにこれを引用する。
1 原判決八枚目表一一行目の「そして」から同裏二行目末尾までを「加害車両は、事業用貨物で、所有者を多摩三菱扶桑自動車販売株式会社、使用者を控訴人会社として昭和五八年一一月に初年度登録されたものである。」に改める。
2 同九枚目表二行目の「支払つていた」の次に「(控訴人会社が第一審被告鈴木に対して支払つていた給料は手取りで月額三〇万円程度であつた。)」を加える。
3 同九枚目表七行目末尾の次に行を変えて「本件事故当日、第一審被告鈴木は控訴人田尾に右事故について報告した。右事故後、被控訴人から第一審被告鈴木に電話などがあつたので、控訴人田尾は、長距離運転もしていた第一審被告鈴木が心労で疲れ、次の事故につながつてはいけないと考え、被控訴人に対し、控訴人会社が本件事故の窓口となつて、三日に一度は見舞いに行くから第一審被告鈴木には電話をしないよう伝えた。そして、控訴人田尾は、被控訴人の母に対して治療費については労災保険を使つて欲しいとか、加害車両は任意保険に加入していなかつたが、任意保険に入つていたのと同程度の賠償はするつもりであるなどと述べた。」を加え、同九枚目裏五行目から六行目にかけての「給与を支給されていたものであるから」を「給与名義で毎月金員を支給され、加害車両も控訴人会社を使用者として登録されていたものであり、その他前認定の諸事実を総合すれば」に改める。
4 同一〇枚目裏一一行目の「年収」から同一一枚目表三行目の「欠勤しており」までを「企業、銀行を顧客とする金利仲介の専門的業務を担当し、年収七〇八万五七九五円の収入を得ていたこと、被控訴人は、脾臓を摘出されたことから疲れやすく、病気に対する抵抗力も弱まつており、月平均二、三日は欠勤したり、同僚に頼んで早退をし、腸管癒着による通過障害気味になると流動物を飲んだり一日絶食をしている状態であり」に改める。
5 同一一枚目表九行目の「現時点」を「原審口頭弁論終結時」に、同一一行目の「現在」を「今後も同会社に勤務し、あるいは同種の業務に従事して六七歳までの間前記認定の年収程度の収入を挙げ得る能力があるものと推認されるところ、」に、同裏三行目の「減少をきたす」を「減少をきたす蓋然性が高い」に、同四行目の「本件」を「原審」にそれぞれ改める。
6 同一二枚目裏二行目の「現場の道路」を「現場の首都高速三号線の道路(制限速度時速五〇キロメートル)」に改める。
7 同一三枚目表二行目の「被害車両」の次に「(ホンダCB七五〇CC)」を加え、同三行目から四行目にかけての「三〇ないし」を削り、同七行目末尾の次に「なお、被控訴人はかねて自動二輪車(オートバイ)で通勤していたが、本件事故当日は右車両が故障して修理中であつたため、友人から本件被害車両を借用して運転していたものである。」を加える。
8 同一三枚目表一〇行目の「いうべきである。」の次に「また、右のとおり、本件事故当時、第一車線と第二車線はいずれも渋滞中で、第一車線を走行中の車両と第二車線を走行中の車両の間隔は約二・二メートル程度であつたのであり、被控訴人としては右車両間をいわば抜けがけするようにして走行するわけであるから、道路の状況に応じて、できる限り安全な速度で走行すべきであつたのに、時速四〇キロメートルの速度で運転したためにその被害が大きくなつたということができる。」を加え、同裏三行目の「八五」を「七五」に、同行の「一五」を「二五」に改める。
9 同一三枚目裏六行目の「三七四八万二七八五円」を「三三〇七万三〇四六円」に改める。
10 同一三枚目裏一一行目の「二七九九万二七八五円」を「二三五八万三〇四六円」に改める。
二 以上認定説示のとおりであるから、被控訴人の控訴人らに対する本訴請求は、控訴人らに対し連帯して金二五八八万三〇四六円及びこれに対する本件事故発生日である昭和六一年五月二二日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があり、その余は理由がない。
よつて、本訴請求につき当裁判所の右判断と一部符号しない原判決を主文のとおり変更し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条、九二条、九三条一項本文をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 丹宗朝子 新村正人 原敏雄)